談合は、不公正な取引方法として、独占禁止法上禁止されていますが、近時においても官製談合のニュースが報道されています。この記事を書いた時点では、中部空港沖埋立工事についての談合事件(https://www.asahi.com/articles/ASR1W3R8KR1WULFA009.html)、広島県の道路維持修繕業務委託の指名競争入札(https://www.asahi.com/articles/ASR1T756TR1TPITB00M.html)などがあります。
官製談合については、入札情報を漏らした側には、事業者の要件等が欠けたり、売り上げが生じていなかったりするため課徴金の対象とならないといった問題が指摘されることがあります(泉水『独占禁止法』773頁等)。
そうしたこともあり、官製談合防止法は刑事罰を定めています。職員でない者については、刑法の公契約関係競売等妨害罪や不当な取引制限の罪の共犯となる可能性もあります。
かつて刑法の談合罪について、競争が激化しすぎて赤字となる場合は談合に正当化事由が認められる、とする議論もあったように思われます。しかしながら、黒字が出るとは限らないのは酷、という議論には疑問の余地があります。そもそも事業者が事業を行うにあたって、必ず黒字となることが確定しているような事業は限られているといえます。そのことからすれば、健全な企業努力による効率化等によって、利益を上げようと活動している事業者間の競争下にあって、自社が赤字になるとしても、それが刑罰に対する正当化理由となるのは、かなり難しいと考えられます。
官製談合等に対する摘発例が多いのは、かつてのようにそれが蔓延していることを意味するとは限らず、当局による摘発能力の向上等も考えられます。競争への悪影響が大きい類型になりますので、今後も厳しい取り締まりがなされることが見込まれます。