婚活サービスの大手IBJが競合他社の取引を妨害したとして、公取委の立ち入り検査を受けたとの報道がなされています。内容としては、他の連盟にも加盟している結婚相談所に申し込みが届かないようにした、ということのようです。
取引妨害は、「自己又は自己が株主もしくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法をもつてするかを問わず、その取引を不当に妨害すること」とされています(一般指定14項)。
一見すると、ライバルを出し抜いくことは、自由競争の範囲の行為のようにも思えます。
自由競争は、自己の商品、サービスの品質が優れていることや、価格が優れていること、数量を多く揃えることができること等によって戦うべきと考えられており、ライバルの契約の阻止や契約を破るよう誘いをかけるなどの行為は、正当な行為とは見られていないのです。両者は重なる領域もあります。しかし、例えば、不法行為や犯罪、不正競争防止法によって質等の優位を競う能率競争を妨げるとすれば、それは正当な競争行為とは異質なものとなります。これを競争手段として不公正であると呼ぶことがあります。
また、契約の破棄誘引合戦のようなものを放置すれば、優れた商品等を生み出すからではなく、企業として大きいから、等と言った理由で勝ち抜く企業が決まるかもしれません。
そうすると、より良い財、サービスを生み出す競争を保護するという独禁法の目的(法1条)を守ることができなくなるのです。そのため、独禁法は不公正な取引方法としてこれを禁止しているのです(法19条)。
婚活サービスでは、利用者にとって使いやすいサービス等が選ばれていくべきですが、取引妨害の規律がなければ、大規模なサイトが他社の取引が成立しないようにして価格等が高かったり、使いにくいといった問題があっても勝ちぬいてしまいます。何より、そうした取引妨害のような後ろ向きな手段に力を注いでも社会に何も生まれません。商品・サービスの開発よりも安易に儲かるからこそ、競争にはルールが必要なのです。
いわば、サッカーでハンドが禁止されているように、してはならない競争方法が定められていることになりますが、これらは競争を抑制するものとは観点が異なるものなので、旧来型の規制とは性格を異にするということもできるでしょう。
優れた商品・サービスを生めば、こうした反則技で事業を潰されることがなくなる、ということは、ベンチャー企業などの参入を容易にし、社会に活力を生むことにも繋がります。独占禁止法が世界の多くの国において採用されているのは、そうした産業政策としても側面もあると思われます。