販売価格の決定についての考察:コンビニエンスストアのフランチャイズ契約事例

違反事例

フランチャイザー(本部)とフランチャイジー(加盟者)からなるフランチャイズ·システムは、コンビニエンスストアや飲食店を中心に普及しています。

あるフランチャイザーAは加盟店における商品Xの販売価格を定め、値引き販売をしている加盟者については、販売相談員を通じてこれを取りやめるよう(基本契約の解除等を示した)圧力を加えました。その結果、Aにおいて販売される商品Xの販売価格は全国と同じ値段となりました。

商品Xの販売をAは推奨していましたが売れ残りのリスク(廃棄に伴う原価相当額の損失)は加盟者が負う契約となっていました。なお、この事例では、直営店についてはとりあえず置いて考えることとします。

見解

1 再販売価格の拘束(独占禁止法2条9項4号)

商品Xの販売価格が全国で統一されたという状況証拠はありますが、公正取引委員会は、こうした「拘束」がないと考えているように見えます。考えられるのは、加盟者が任意に本部の提示する希望小売価格を受け入れているという構成です。

全国どの店でも同じ価格で買うことができるということについて、

①顧客(消費者)にとって一種の信頼を生む
②その価格で商品を売ることで、価格に見合った品質である、あるいは価格の割に質が高いと言った、全店舗を通じてブランドイメージを広めることができる
③加盟者は極度の安物でない一定の品質を備えた商品があるというイメージがあるおかげで利益率が保たれた商品を売ることができる
④値下げをするときは全店舗一斉にすることで、テレビCMなどの効果を享受することができ、キャンペーンの波及力、印象力を最大化することができる
⑤本部が商品候補の提示をすることで、加盟者は納入元選定のコストを削減できる

といった事業上のメリットが想定できるとします。こうしたメリットがあるならば、加盟者がきちんと理解して任意で希望小売価格を受け入れていても、それは競争的行動の一環として加盟者が決定して実行しているものであると考えることもできるでしょう(実際、あるコンビニチェーンに加盟しようと考える加盟者は、そのことで消費者から一定の信頼を得ることができると考えて加盟費用を負担していると考えるのが自然と考えられます。)。

この構成は、しかし、加盟者の任意性が失われた場合は、独占禁止法違反の問題を生じうるというコンプライアンス上の課題があることに注意を要します。

2 優越的地位の濫用(独占禁止法2条9項5号)

契約締結時に当事者が合意の基礎とした事情が事後的に一方的に破棄されるならば、契約利益は守られるだろうという信頼が害されるおそれがあります。その場合は、優越的地位の濫用も問題となります。