法的リスク適切にカウントできていますか? 五輪談合事案を素材に。

五輪談合事件では、電通など6社と7人が起訴されるに至っています。

確かに、談合などの競争制限行為によって得られる利益は大きく、それだけ誘惑性の強い行為ということができます。

しかし、これが白日の元に晒された場合の企業が受けるダメージは軽視できないものがあります。トップが逮捕されるなどによるブランドイメージの毀損もありますし、そうした報道がホットな間には広告効果も低下し、ライバル企業に売り込みの隙を献上することになります。個人にとって前科がつくということは大きなマイナスですし、競争制限効果が排除されたと認められるために企業が払う代価は大きなものというべきです。

一時の売り上げが大きくても、課徴金も高額なものとなるかもしれません。

従前、日本では、不当な取引制限をしたとしても、刑事罰に至ることは稀であると考えられてきました。しかし、リニア・モーターカー談合事案など、社会への影響が大きい場合に刑事罰が課されるようになってきました。

不当なり引き制限等の罪は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金です(法89条1項)。未遂も罰せられます(同条2項)。

企業にとって500万円以下の罰金は大きくないでしょうが、抑止効果を得るために課徴金の制度があります。個人にとって5年以下の懲役はどうでしょうか?重い刑罰に当たる罪ということができるのではないでしょうか。

例えば、いくら儲かりそうだからと言っても、他人から預かった物を横領しようとする企業人はまずいないはずです(単純横領罪がちょうど5年以下の懲役です。刑法252条1項)。しかし、不当な取引制限違反の罪は、そのような違法の実態がある行為であるにもかかわらず、それと意識せずに行われている可能性があります。

これはリーガル・リスクに対する算定を誤っていることになります。

海外では、刑事罰に至るリスクはより大きくなります。

それと気づかずにハイ・リスクの行為をして人生を棒に振ってしまう、そうしたことのないよう、企業は、リーガルリスクに対する正しい評価ができるよう、研修等を充実させる必要があると思われます。日本を代表するような企業のトップが逮捕される、そうした事態が頻発することは、御免こうむりたいところです。