1 下請法の意義
下請法は独占禁止法上の優越的地位の濫用を補完するものとして定められた「特別法」(特定の分野に限って優先される規律・ルールを定める法律)です。
その特徴としては、独占禁止法と異なり、比較的画一的な判断が可能な仕組みがとられているところが挙げられます。公正取引委員会が個々の取引分野について調査等に時間を要することなく、迅速に規制権限を発動できるという点で、個別具体的に検討される独占禁止法との関係で独自の意義を有するものと言えます。
2 下請法の規制内容
親事業者が下請事業者に物品の製造、修理、情報成果物作成、役務提供を委託する場合、親事業者には支払期日を定める義務(下請法2条の2第1項)、発注書面の交付義務(同法3条)、遅延利息を支払う義務(同法4条の2)、下請取引に関する書類の作成・保存義務(同法5条)が課せられます。
また、禁止行為として、①受領拒絶(同法4条1項2号)、②下請代金の支払い遅延(同号)、③下請代金の減額(同項3号)、④返品(同法項4号)、⑤買いたたき(同項5号)、⑥購入・利用強制(同項6号)、⑦報復措置(同項7号)、⑧有償支給原料等の対価の早期決済(同条2項1号)、⑨割引困難な手形の交付(同項2号)、⑩不当な経済上の利益の提供要請(同項3号)、⑪不当な給付内容の変更・やり直し(同項4号)が挙げられています。
このうち、①から⑦については、親事業者が行えば違法となるのに対し、⑧から⑪の行為は当該行為によって下請事業者の利益が不当に害されるときに違法になります。また、①③④⑥⑧⑩については、下請事業者の側に責任がある場合や正当な理由があるときには違法となりません。
※ 各規制について図で説明したものとして公取委のホームページ(https://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukegaiyo/gaiyo.html)も参考になります。
<CASE>下請代金の減額(同法4条1項3号)公取委令和4年9月9日勧告
Y社は、コンビニチェーンであるA社およびA社のフライチャイズに加盟する事業者等に対して販売する食料品及び飲料品の製造を資本金の額が3億円以下の法人たる事業者(以下「下請事業者」という。)に委託している。
Y社は、A社フランチャイズに加盟する店舗に配信する「商品案内」を作成する費用として「商品案内作成代」を請求されており、その全額を「写真代」と称して、下請代金から差し引くことにより、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減じていた。
他社に対し、何らかの負担を課す場合には、法令違反とならないか、リーガルチェックを受けることが必要です。